地下室のメロディー


 その空き巣、随分臆病だな、と口に出してしまったことに自分で気付くのに、若干の誤差があった。男は反射的に黙り込んだ。考えるだけで留めておくつもりだったのに・・・と弁解するかわりのように。


 テーブルの向かいの恋人が、聞き返す替わりに彼の顔をじいっと見つめた。少し間があって、「・・・だから、家の中もいろいろと落ち着かなくって、連絡をとれなかったの」と続けた。



 窓の外で車が行き交うのに目を遣っていると、店内に流れるジャズが、男の中に入ってきた。女は、テーブル・ナプキンの箸を摘んで、口の周りを細かに拭いている。



――疲れているの?




 不意に、女が尋ねた。




――お互い、仕事で忙しいのね。



 そんなことは――と答えながら、もう会うこともないだろう、と男は考えた。漂っている旋律を追うことに、意識が向かい始める。


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くどくど付け足す(※昨日の日記参照)替わりに、「昇華してみせようじゃないか」という心意気のつもりで、書いてみる。タイトルは甲斐バンド。昨日の例のライブに関しては、大人だから触れません。それよりもデヴィッド・シルヴィアンの新譜が完全に「ハイセンスなインテリア」扱いで売られているっぽいことに愕然。