『そして僕は途方に暮れる』


「好きな色で描きなさい」とその人は言った。
とてもきれいだったその人――
父は名前で呼び、母は「あんな女」と呼んだ。


母は夢など見るような人ではなく
いつもなにか記けてはため息をついていた。
夕暮れの逆光――


きれいだったあの人は
いつも絵の具の油の匂い。
キャンバスの上には、鮮やかな色彩。
「もう少し混ぜるとグレイになってしまうのよ」
と、その人は少しだけ自慢した。




祖母はその日、乱れた髪も気にせず笑っていた。
「あの女、ついにとっちめてやったわ」と。
きれいだったあの人は
点滴の落ちるのを静かに数える。
父は部屋の外から詫びたという――




母は僕に訊く――
「どうして空を緑に塗ったりするの?」




頭が痛い気がするのは、油絵具の匂いのせい
でもそんなこと、どうだってよかったのに。
あのアトリエの日のコーヒーは
とてもいい香りだったから。



・・・・・・・・・・




暗くてごめん。気付いたらこうなっていたのだよ。あとタイトルはググればいいと思います。