『気にしてない』



横で穏やかに寝息を立てる君を見ながらーー



僕は思い出していた。

君のあのハイヒール、何度も継いだ跡があった。

「きっと運命よ」と今でも、君はよくはしゃいで笑うね。

そして僕が想うのはーーもしも僕があの時通りかからなかったら、ではなく、

君には今まで何人「運命」の人が居たんだろうってこと。

オレンジにライトアップされたプラットホーム、君は見返り美人みたいなポーズで、困った顔で足下を見つめる。

唇の唇の間に、僅かな隙間。

それはとても絵になる光景だったね。



君のやわらかな胸が、呼吸の度に膨らむ。

毛布の中には、二人分の暖かさ。

そのうちに君は眼を開けて、夢うつつに微笑みかけるのだろう。

このまま何もなかったみたいに、この甘やかな空間に溺れていたい。






キャンバスの中の君が、完成してしまっても。



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基本的に映像を意識して書いてるんだけど、それで主観の文にすると、なんだかいつも主人公が視線フェチの人っぽい印象になってしまう。一応その上で体裁は整えてるけど、困ったなあ。書き方変えようかなあ。でもなんか柱とト書きとカギカッコの世界になっちゃうと味も素っ気もないしなあ・・・。