sasabou2005-08-25


14.「True」/L'Arc〜en〜Ciel('96)


 「L'Arc〜en〜Ciel(ラルク・アン・シエル)」というのは、フランス語で「虹」という意味である。というのはまあ、このバンドの大ブレイクに伴ってすっかり有名になってしまったけれど(笑)。

 そんなラルクの、第一期を締めくくるアルバムがこの「True」。

 ・・・と、こういう時代の区切り方に異論がありそうなので、まずはその辺をまとめておこう。事情に多少詳しい人なら予想は簡単につくだろうが、一回目の活動休止('96年)までを上では「第一期」と呼んだ。実際にsakura(Ds.)の不祥事によるやむを得ぬ活動休止と、それに伴うyukihiroへのバトンタッチという著しい変化がこの間には起きているし、そういうファクターからのみでこの区切りをすることも可能なのだが、むしろ僕が重要視しているのはもっと本質的な側面、すなわち、バンドの創る音、そして語るものの変化、である。
 ここからは実際に音を聴いてもらうと分かりやすい話になるが、早い話、この「True」までは、音で実体を伴った世界を描き出す作業が行われている。即物的に言えば、中音域が充実している、ということなのだが、肌触りのある歌、と言えばわかりやすいだろうか、楽器隊も、実に細やかに、ニュアンスの異なる多様な音を、低音から高音まで、幅広いレンジに渡って奏でている。扱うテーマも、柔らかなイメージの幻想世界、もしくはポジティブな意味での空想世界の実体化の希求である。これは結局、「愛の確認」と言い換えられるのだけれど、ずばり「心」を表現しようと試みたアルバム「HEART」('98)や、「悪魔」「神」を扱った「Shout at the devil」「forbidden lover」、「仮想の楽園」を扱った「Promised Land」、「HEAVEN'S DRIVE」、「STAY AWAY」といった「批判」「否定」から出発するこれ以降の歌(と、いちおうここではひと括りにしておこう)とは違い、言ってしまえば、この「True」というアルバムまでは、肌で触れることのできるもの、つまり質感と、「愛」という曖昧なものを結びつけることを、作詞をほぼ一手に担っているhyde(Vo.)があきらめていないし、バンド全体としてもその方向性に向かう足並みに乱れがない。それがかなり困難であることがわかっていても、「否定」を恐れぬ「肯定」から出発している。ゆえに、感情や変化を素直に反映した、ある意味純粋な音がここでは聴かれる。言ってみれば、水彩画の世界に近い感触だ。

 で、この話はもう少し続くのだけれど、ここではこの作品の「水彩画」としての評価だけ示しておこう。ボーカル、ギター、ベース、ドラムという4人のバンドサウンドに、適宜マウスハープやホーンなどを加えていくという方法論で構築された音像は、味わいと深みを併せもち、変化に富んで、デビュー作(と呼んでいいと思う)「DUNE」から続く「空想の実体化」路線の完成型と言えるだろう。飽きのこない、純粋にーーメッセージ性や同時代性、イデオロギーから切り離したところでーー音楽を楽しむことの出来る作品である。そう、これは「工芸品」と呼ぶにふさわしい作品なのである。