sasabou2005-08-05


10.「「Best of Bowie(UK 2CD EDITION)」/DAVID BOWIE('02)


 つーことでとおっても久しぶりなこのコーナーの更新。仕切り直し第一回目はこんなのから。



  「時は僕を変えていく
    でも僕は時に足跡を残せない」
     ーー(「Changes」)



 デビッド・ボウイというと、変幻自在のカメレオンマン、みたいな認識が世界基準ですな。あるときはシュールなフォーク歌手、あるときはユニセックスでギラギラのグラム・ロッカー、またあるときはソウルやファンクに走り、そのままヨーロッパの痩身蒼白の貴公子(芸術系)に化け、かと思えばまたあるときはディスコヒットを響かせ、かと思えばインダストリアルに接近、ドラムンベースを経て、石膏色の「Heathan」('02)の境地に至る・・・と。
 ・・・ていっても、ウチのお国的に有名なのはディスコヒットまで・・・だからなのか、全世界23種あるといわれるこのベスト盤、日本盤はかの有名な「Let's Dance」期を最後に、そのあとの'80年台中盤の低迷〜'90年代の復活〜実験という辺りからのセレクションがすっぱり抜け落ち、唐突に「Heathan」からの「Slow Burn」=要するに当時の最新曲、が続いて幕を閉じるというニャンともいびつな仕様になっております。だいたいが選曲がヒット曲基準ですし、はっきりいって、あまり総括的ベスト盤としては役に立ちません。特に「The Man Who Sold The World」みたいな陰鬱フォークや、「Sound And Vision」の立体的エレクトリック・ファンク・サウンド、あとは「Jump They Say」のシャレた余裕っぷり、「Little Wonder」のドラムンおやじっぷり・・・などを収録した、現在日本国内でも手に入る中ではもっともまとまっていると思われるこのイギリス盤2枚組バージョンの選曲の足下にも及びませんね(ちなみにイギリス盤は生意気にも1枚モノと2枚組の2パターン出ているので注意)。

 で。こう書くとただの「スタイルをコロコロ変える器用なヒットメイカー」と思われそうですが、それは断然違う!ということが聴けばわかるはず。なんというか、インタビューでも語っている通り、その時々の、自身を取り巻く環境に影響されてひらめいたイメージをどう音像化するか、ということに専心してきた、その軌跡がここにはあるのです。だいたいが、ここでやってることは時代の最先端どころか、時代のはるか先をいってることばっかりですからね。むしろはるか先を行き過ぎて別次元に達してしまい、今聴いても色褪せない曲ばっかりなのですけど。



 あと、こういうアーカイブ的な作り方のレコードがここまでキマる人ってのもいないですよね、実は。そういう意味でもよく出来てます。でも「Young Americans」のわけわかんないエディットバージョンだけは勘弁して欲しかった・・・ (泣)。