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8.「Helpyourselfish」/D:A:D('95)
コミカル・パンキッシュ・哀愁・ロックンロールで一世を風靡した(らしい)デンマーク産変異種ロックバンド、D:A:D。前作「Riskin' It All」から4年、満を持して、というよりもほぼ忘れられかけた頃に出たのが今作。
そんな作品で、いきなりこんなことを言い放つ。
"as a statue wearing complicated clothes
複雑な衣をまとった銅像のような
a monument to power, standing but on reconstrucdead toes
力の象徴――爪先立ちで、立ち直ったってのに死んだまま
at my feet there's a plate that I haven't read...
その足元には、自分じゃ読むことも出来ないプレートが置かれてる
apart from thatーthen I'll be reconstrudead..."
遠くから離れて見てみたら・・・それは俺自身――
やっと立ち直ってのに、死んだままの・・・」("Reconstrudead")
アルバム全編を包むのは、従前の、明るいけどどこか哀愁あるロックンロール、というサウンドではなく、どこか強い意志を感じさせる、ハード・エッジでボトムの効いた、硬質なロックの手触り。かつてのD.A.D.はどこに? いや、「D.A.D.」じゃないな、微妙に改名してる・・・(笑)。
きっと、彼らは以前の自分たちと決別したのだろう。でも、芯は変わっていない。「Help yourself(自分のことは自分で)」と「Help your selfish(自分のわがままを肯定しろ)」をかけ合わせた、と語るタイトルのセンスのキレに、やっぱりこの人たちだあ、という感慨。「it'swhenit'swrongit'sright(間違ってるときこそ正しい)」という、メッセージ性と洒落の同居する(あえて説明は省きます)言語センス。
しかしながら、解散の危機を乗り越えた、という背景もあってか、強く前へ進もうという意志の籠り過ぎたサウンドメイキングは、感動的ではあるけれども、持ち前の皮肉めいた遊び感覚の存在(確かに存在はしている)をぼやけさせてしまっている。
・・・だからそう、例えば、結局"Reconstrucdead"という曲が何を述べたかったのかというと、
「復活して、また祭り上げられて、実像とはかけ離れた虚像がブチ上げられてしまう・・・かどうかも世間様にご無沙汰しすぎて怪しい現状の自分たち」
を自嘲的に歌いたかっただけなんじゃないかなあ、と思うのです。曲が深刻だから気付きにくいんだけども。
で、問題はここからで、このハードなサウンドが、偶然にも時の流行、オルタナティブ/グランジ・ロック(アメリカ産)に似通ってしまったために、「日和った」と見当違いな批判を受けたことにあります。
・・・このアルバムが見境なく、暴力的に聞き手にエゴ(もしくは「オレはここにいるぜぇ!」というチャチなアピール)を叩き付けるようなものでないことぐらいはよく聴けばわかると思うのだけれど。(次回に続く)