sasabou2004-08-31


5.CHEAP TRICK」/Cheap Trick('77)


 そんなわけでCheap Trick祭第2弾。よろしく。



 ・・・かつて。ロックカルチャー華やかなりし70年代も終わらんとしていた時代。


   Cheap Trickがオンナコドモのバンドだった頃があった。
   黄色い歓声を一身に浴びるバンドだった頃があった。
   「ビッグ・イン・ジャパン」だった頃があった。
   そんな彼らを作ったのが、このデビューアルバム。


 ・・・らしい。だってまだその頃生まれてないもん(笑)。


 さて、時は一気に世紀末。ひょんなきっかけで(まあ吉井和哉がオススメしてたからなんだけども)本作を購入するに至った高校生のワタクシ。はたして何を思ったか。


「うわっっ! なんじゃこれ!?」


でした(笑)。あたかもそれは、くらもちふさこ萩尾望都のマンガに初めて出会った時の衝撃にも似ていた。これがメインストリームにまかり通れる幸せ時代があったのか!という(笑)。だって、ですよ。なんなんだよこの詞は。


  俺は男娼
  このちっぽけな娘は
  いいカモだ
  落とすくらい
  簡単さ("He's A Whore")


  俺は30だけど16みたいな気分
  あんたのパパと知りあいかもしれない
  汚い男だけど体は清潔さ
  ひょっとすると俺があんたのパパかもな
  あんたが好きだ そっちも俺が好きだろ?
  猿ぐつわなんかはめてごらんよ
  すっかり裸になったほうがステキだぜ("Daddy Should Have Stayed In High School")。


  彼はあんたを憎んで金を愛する
  あんたのシャツを盗んで面白がる
  彼はビートルズと同じで人間じゃない
  ほら 税金取りがあんたを狙ってる("Taxman, Mr.Thief")


 音作りはワイルド&マニアック。しかしながら、曲の大概は一緒に歌えるポップ&キャッチーさ。さらに厄介なことに、随所に涙腺を刺激して止まぬ美メロを含んでいる。

 慌てて歌詞カードをめくる私。真っ先に目に飛び込んでくる統一感皆無なメンバー。まんま少女漫画な、それこそ萩尾望都のマンガから出てきたようなロビン・ザンダー(Vo.)、目にした瞬間、思わず戸惑う(苦笑)リック・ニールセン(G.)、オサレなトム・ピーターソン(B.)、黙ってたら単なる恰幅のいいオッサン(笑)なバン・E・カルロス(Dr.)・・・ナニコレ? シャレ効きすぎだって!! そしてどんどんこのメチャクチャな世界にはまってゆく私。


 要するに何が言いたいかっていうと。


 Cheap Trickの良さがストレートに伝わるのって、実は年季の入った、相当スレたロックマニアなんではないかと。しかしながら、そこを敢えて「ポップ&キャッチー」(と、ルックス/笑)を隠れ蓑に、初心者にもいつのまにか受け入れさせていくのが彼らのスバラシク、そしてカッコイイところなのではないかと。故に、昨今の、年季の入ったファンだけに彼らが愛でられてる状況というのは非常に歯痒い訳です。だから拙い技量でこんな布教文を書いている(笑/ちなみにこのCheap TrickQueenその他を早くから受け入れていた当時の日本のオンナコドモ・ロックファンの耳って実は相当凄かったんじゃないかと思います、私は)。



 ・・・いちおう年代史的にみると、レコード会社の意向やらレコードセールスやらなんやらのオトナの事情が複雑に絡まって、次作以降、彼らはこのポップ&キャッチーさとワイルド&マニアックさとのバランス取りに長い間苦労することになるわけですが、それはまた次回以降に。




 蛇足:ちなみに管理人は、「ロビンはもちろんカッコイイけど、トムの方が断然イイよね!・・・頭デカいし足短いけど・・・」派です(ヒネてるよなあ)。