ズナフ讃江

 どうせまた口ばっかで行かなかったんでしょ〜?というご指摘があるかどうかは知らないが、ところがどっこい、言ってきましたEnuff Z'nuff@CLUB CITTA。正直「無事にライブが執り行われるのだろうか・・・」とか不安だったんだけど(笑)、杞憂でした。



 僕が彼らを聴き始めたのは『10』の時なので、もう9年前になるけど、そのライナーノーツでドニー・ヴィー(Vo.)が「俺たちはNew ThingやFly High Micelle、Baby Loves You、Innocence、Wheels、Freakといったトップ・シングルを出したバンドだ」って書いてて、当時素直だった僕はおもっきし騙されました(笑)。そんなにヒット曲のあるバンドなのか!という・・・実際は"New Thing""Fly High Michelle"がそこそこのヒットだけど、他はチャート的には全然で、そもそもそういう意味で「トップ・シングル」なんだったら自分で言うなよという感じだが、まあクオリティーとして、ということであろう。とはいえやっぱり自分でそのように書けるドニーはなかなか大したモンだが(笑)。

 そして僕はそこから『Peach Fuzz』『Animals With Human Intelligence』『Brothers』『Enuff Z'nuff』『Paraphernalia』と聴き進んでったわけだけれど、正直未だによくわからんバンドだ(笑)。とにかく俗に「半音階」というヤツらしいのだが、煮え切らないメロディーが微妙に気にかかるとか、弾けきらないアレンジがモヤッとする、とか、そういう感じで、正面切って「最高!」というのとは違う、「いいねぇ・・・」と唸る感じのバンドだった。よく「ビートルズ直系」と言われるけれど、そこまで単純ではないし、Cheap Trickの後輩、というのも音楽的には微妙に違うと思う。それはきっとドラッグによる混乱とか、それによる不遇とかが影響してたりするんだろうけど、一筋縄では行かない、それこそ『Peach Fuzz』のジャケットみたく、ものすごく美味しそうなんだけど、なんだかよくわからない、というのが僕にとってのZ'nuffさんのイメージだった。



 そんでもって今回のライブ。のっけから"Baby Loves You"。そっか。ライブだとこんなに弾けちゃうのね・・・というのが正直なところ。"Kitty"や"Vacant Love"といったところも、音源ではわりとサラッと聴けるけれども、ライブだと大盛り上がりのシンガロング状態。要するに単純にして味のある曲と、その強さ、ということだと思う。バンド演奏もそれに徹していて、その「単純さ」のために、出すべきところは出す、引っ込めるところは引っ込める、というタイトさ、キレの良さが際立っていた。ところどころ必殺の高音フレーズを挟み込むチップ・ズナフのベースも、なかなか。「9年ぶりの来日だしなー」とか「次があるかわからんしなー」とかヌルいことを思っていた僕はいったいなんだったんだろうか。こんなにZ'nuffが弾けるバンドだったなんて、ねえ。

 そんでドニーがやたらめったらマイクを振り回すんだ、これが(笑)。酒は飲むわ煙草は吸うわ、客席にバナナやリンゴを投げ込むわで、完全にやりたい放題。そしてそれをときおり冷ややかに見てるような、見てないような・・・のチップ。そう、この"brothers"な二人の仲は、こちらからはあまり良好に見えなかったのだ、実は。特にアンコールが"The Love Train"一曲で終わってしまって、ドニーがさっさと袖に引っ込んでしまった後のチップは、どうにも不機嫌に見えた。ベースを機材に叩き付け、それから客席に詫びて(たと思う)、「次を楽しみにしてるよ、また会おう!」的なことを言っていたけれども、やっぱりあれは「ここは俺が穏便に収めなきゃなー」ということだったんだろう。会話もあまりしてなかったし・・・とか言ってチップがたまたま具合悪いだけだったらゴメンだが、どこか「いやあスイマセン、ウチのドニーがわがままで・・・」という微笑ましい光景にも見えた。なによりあのバンドの一体感ある演奏が全てに勝っていたと思う。つまりそれは、多少気に食わないように相手を感じてても、ともかく曲はいいし演ってりゃ楽しい!という、音楽が全てを繋ぎ、そして勝っていた、というような不思議なマジックがあった・・・気がする(笑)。彼らの英語のMCを解さずに、この辺見た目だけで言ってるので違ってたらゴメン。



 いやそれにしても今回のライブは長かった・・・SPECIAL GUESTという名の前座のGLAMさんがたぶん1時間弱演った後(Queenのカバーしかわからかった・・・)、10分少々準備を挟んで、2時間ぐらいZ'nuffさんが演り、終わったら20分休憩があって、アンプラグド・パーティーがあり・・・で、結局全部で4時間半ぐらい。お値段的にはだいぶ満腹。まあ前述の如く知らない曲も多いのでセトリを書いたり出来ないのだが(メモすらしてない)、一曲目"Baby Loves You"で、知らない曲が続き(笑)、"Kitty"、"For Now"、"In The Groove"、"Rock N' World"、中盤はアコースティックで、ドニーとチップの二人だけ、で"Right by Your Side"など、んでバンドに戻って"There Goes My Heart"、"Vacant Love"、"Fly High Michelle"、"New Thing"あとアンコールが"The Love Train"という感じだった筈。新作からは"High"とか"Dissonance"あたりを演ってたみたい。あとたぶん"Z Overture"も演ってた。"Blue Island"も演ってたらしい。そんでチップの歌う"The Jean Genie"とか、あと"Come Together"なんて、カバーもありました。アンプラグド・パーティーの方では"Norwegian Wood"、"Innocence"、"It's No Good"、"Someday"、"Hide Your Love Away"だったと思う。というわけでビートルズ好きなのね・・・ということがよくわかる曲目だけれど、でも、それと並んでもひけをとらない「単純さ」と「良さ」がオリジナル曲にもあった。やはりなんだかうまく言葉にできないが、要するに必要な物しかない「機能美」(って言葉は似合わないけど・・・)に徹したような楽曲、そしてそれをキレよくガン!と演ればOKなんだぜ!というある種の潔さや美学や、もしかしたら男気やあと多分に「ロック!」を実感した。




 あまりまとまらなかったが、公約通りライブが良かったので「Dissonance」買ってきたよというところで、なんとなく結論になる気がする。お金があったらツアーTシャツも他の旧譜も買ってたのに・・・とか、そういう。なんとなく弾けきらない感じで、終わりたいと思います(笑)。