ぷろっつ・そのさん

ちょっと路線を変えてみる。それにしても暑いね。




今回のお題は「コラボ」




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 車イスにだらしなく凭れたままの視界の中で、縦に波が何度も打ち寄せている。「まるで喝采のようね」傍らの彼女が言った。「ああ、昔よくヘンな服を着せられて歌ったね」
 艶やかな髪と透けるような肌――「その変わらぬ美貌も、最新技術の賜物?」――彼女は答えなかった。張り付いた表情に、どこか引き摺るような影があった。「あのとき、あのムカつくギタリストを刺したりしてなきゃな」――笑えないわ、と彼女が呟いた。「そのうえ、あなたはクスリ漬けだった。よく三十年で済んだものだわ」波が行っては戻る――「その意味は、よく考えたよ」
 「憶えてる?」彼女が歌いだした。『歌姫』の声は、驚くほど低くなっていた。「昔ステージで・・・」声を重ねる。「あなたの声は、変わらないのね」「足はイカれたが、だからといって本ばっかり読んでたわけじゃないんだよ」彼女が笑った。
 奇妙なハーモニーが、また始まった。まるで配役を間違えたかのような――が、これはこれで悪くない・・・。