地下水道

いつだったか、「結局映画は煽動にしかならないのでしょうか・・・」などと、寝惚けたことを言ってきた知り合いがいたが、今なら言える。映画とは巨大な転回装置です。


下層と言われる人々の持っている冴えた現実感覚を紡ぎ取ったり、セレブだのイケメンだのの中に潜む頽廃(と言うのすら持ち上げすぎか・・・)を抉りだしてみせたりするのが恐らく今、少なくともこの国において、あらゆる「表現」がすべき仕事でしょう。そして映画というのはそれが最も効果的に行える媒体だと思う。映画ほどリアリティーに縛られた表現もないが、それ故に、上手くすればリアリティーをひっくり返すのがこれほど容易な表現もまた、他にないはず。






ま、「映画、我が人生!」みたいなこと言っちゃって気持ちよくなって思考停止してる人間を僕はさんざん馬鹿にしてきたけど、論拠はこのへんにある。映画がなにがしかの最上の価値観、みたいな先入観持ってる時点で、その人は映画をわかってないです。映画ってのはちゃんと作ろうとすればするほど、全ての構成要素が等価値になっていく容れ物なので。基本的に酔いしれるようなシロモノじゃねえんだよ。映画は装置なんだ。機械なんだ。