「花降り月夜と恋曜日」('02)/田村ゆかり


2nd。2002年発売。
前作のとっちらかりっぷりから一転、見違えるほどクオリティーが向上。本人の声を活かしたアカペラ主体のinterludeの導入をはじめ、無難な爽やかJ-POP路線から、良い意味で「濃い」路線に転換。
まずゆかりんありき、という基準で制作が進められたのだろう、全体に本人のキャラクターが「立って」いる。そして、歌詞のテーマはド直球。全てがラブソング。「幸せの種を手のひらにのせて 大きな花束を届けたくって/大切な物は大切な人に 必ず届くからね」ーーー芽生えたばかりの恋心を、可憐なbaby's breathーカスミ草のイメージに託したシングル曲「Baby's Breath」のはじけるようなポップさだけ聴いても、このアルバムが「勝ち」であることがわかる。
他にも、オルゴールの音に導かれて、全編にノスタルジーの色を漂わせつつ秘めた想いを歌った、切ない「つぼみのままで」や、ウィスパーボイスがほのかに色香すら漂わせる「さよならをおしえて」(最初に曲目で見た時は「戸川純のカバー!?」とか思ってしまいました/笑)、異国の地で彷徨う、微熱を帯びた夢を見るような「上海夜曲」、以降の定番、パンキッシュ・ガールズロック路線の幕開け「Fortune of Love」などなど、バラエティーに富み、かつそれを演じこなすゆかりんが素晴らしいのだが、そんな中で、「うたかた」のようなさりげない曲をなんでもないような風でいてしっかりモノにしているのは驚く。前作から一年、一体なにがあったのか・・・というよりも、むしろ「summer melody」のような曲で発揮されていたゆかりんの実力を、今回は全編にしっかり定着出来た、ということなのだろう。バッキングもそれを引き立てるように、決して悪目立ちすることなく、それでいて適材適所、しっかり活躍している。「Fortune Of Love」なんて、一瞬アンドリュー・WKみたいですよ(笑)。



唯一「Love Parade」が前作の路線を継承したかのような爽やかポップス路線だが、それも中盤のポリネシアン・リズム×オーディエンスSEという意表をつく展開でどこか独特な味を出すことに成功している。まあ唐突な展開っちゃあ唐突なんだけど(笑)。




さて、いきなりこんな快作をモノにしてしまったゆかりん、この次はどうなるのか・・・リアルタイムでこの作品に出会えていたら、この期待感とそれに続いた展開ってのは、きっととんでもなくたまらないものだったんでしょうな。





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・・・てな感じで、最後にひとつだけね。きっと「ゆかりん最高! だーい好き!」ってのはきっと他にもっと上手く書ける方がいると思うんですよ。今更僕なんかが書いてもそれはどうなのかなっていうことだと思う。だから、むしろもっと間口を広げた書き方で、「fall in love 初めての気持ちね」くらいの俯瞰視点で書くのが僕には合ってるんですよねきっと。





P.S 外道も村八分四人囃子頭脳警察も聴いたことないので、話振られても困っちゃうだけです。ごめん(笑)。