sasabou2004-10-09


7.「冬の十字架」/忌野清志郎('99)



 ・・・実は、RCサクセション、とりわけ忌野清志郎との付き合いは古くてですね。



 なんせ小学校に入りたての頃に母親が「忌野旅日記」を貸してくれましたからね。夜寝るまでの読書用に。(あ、「忌野旅日記」ってのはキヨシローのエッセイ集なんですけどね)

 んで、小学校も高学年になると早く起きすぎた日曜の朝には「愛しあってるかい」を読んでヒマつぶしてましたさ!(コレはRCサクセションアーティストブックですね、今で言うところの)

 ・・・で、まあなんだかマが空いて約3年後ぐらいにラジオで聴いた「雨上がりの夜空に」で完全にハマるわけなんですが!(笑)




 そんなこんなで、「愛しあってるかい?」




 ・・・このフレーズって誰だったか有名なブルーズマンの名文句から引っ張ってきたんだった・・・はず。チャボ(仲井戸麗市/RCのギタリスト)も語っておりますが、「(おまえら)愛してるぜー!」と言わずに、ちょっと照れを含んで「愛しあってるかい?」と訊くところが実にキヨシローらしいんですね。この言語感覚。これがあの珍妙な声と合わさってなんともいえない味を生み出すという。この辺やっぱりキヨシローの魔力ですね。


 そしてその魅力はこの「冬の十字架」でもいかんなく発揮されてるわけです。


 「もう一度だけ言おう 俺がロックンロールなんだ」とか念押しされちゃう、しょっぱなの「俺がロックンロール」とか、「人々はただ笑うしかなかった 大人のくせに自分のことで手一杯だったから」と毒づく「こころのボーナス」とか。わけても「明日また話そう」のフレーズ+αで歌詞を構築してしまった、いかにもキヨシローな「明日また話そう」がイイ。これまた深読みしようと思えばいくらでもできそうではありますが(このアルバムの発売までの経緯を鑑みるに)。でもそんなこと考えなくてもただ言葉の面白さだけで、イケます。てかキヨシローじゃなきゃこんなん作れませんね(笑)。個人的にはラストの「じゃあな」というキヨシローの呟きがぶっきらぼうのような優しいような、でなんだかジーンとくるんですが。


 ・・・で?


 この、音はちょっと土臭いハードロック寄りでラジカルなんだけど、結局はいつものキヨシローらしいというしかないアルバムをセンセーショナルにしちゃった最大の要因、すなわち「君が代」のカバーについてなんですが・・・。


 ・・・そうだなあ、かつて「Love Me Tender」のカバーで「核はいらねえ、牛乳が飲みてえ」と歌ったユーモアセンスがイマイチ感じられないのが残念・・・てか、悪くとれば時事ネタをテキトーに料理して話題作りを狙っただけのような・・・良く言えばタイマーズ時代その日の新聞の記事をネタに曲を書いてた、というキヨシロー独特の茶目っ気というかそのようなものというか・・・たぶん後者なんだろうなあ。結構ノリで作る人だから・・・。ま、ただ何も知らずに聴く分には、多少「キミガヨ」を茶化して歌ってみました、程度にしかたぶん聞こえませんな、きっと。思い付きで。おふざけで。もしかしたら意図するところは「君が代って要するに、どういうことなの? これを機にちょっとその辺気にしてみないかね」だったかもしれないけど・・・(その意味では完全に成功作)。